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教室の景色も、いつもと変わらない。
新学期を迎えても、カリキュラムのコース別に編成されたクラスはそのままだ。
新しい季節の始まりにざわついている教室を無言で通り過ぎ、窓際の一番後ろの自分の席についた。
この席が好きだ。
自分の書いたものでは無い落書きは、気を抜くと増えていくけれど、端っこの一番後ろの疎外感が、とても心地が良い。
頬杖をついて外の景色を観ていれば、無条件で自分だけの世界に閉じこもれるような気がする。
・・・のだけど、今日は少し気になることがある。
『わたし』の席の隣に、空席があるのだ。
「よーし、席につけー!」
横目で空席を眺めていたら、勢いよく教室のドアを開けて、先生が入ってきた。
「今日はホームルームの前に、転校生ば紹介するぞ」
転校生というワードに、当然のようにクラスが沸き立った。
「しーずーかーにー!!」
赤いジャージの手が、パンパンと大きな音で打ち鳴らされると、少しだけざわめきが止んだ。
「よし」
先生は、チョークを手に取り、転校生のものと思われる名前をデカデカと書いた。
中性的な名前に、「男?」「女?」と、クラスがまたざわついてくる。
「さぁ、入って」
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