第一章 春 ─『わたし』と“僕“とコイツ─

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教室の景色も、いつもと変わらない。 新学期を迎えても、カリキュラムのコース別に編成されたクラスはそのままだ。 新しい季節の始まりにざわついている教室を無言で通り過ぎ、窓際の一番後ろの自分の席についた。 この席が好きだ。 自分の書いたものでは無い落書きは、気を抜くと増えていくけれど、端っこの一番後ろの疎外感が、とても心地が良い。 頬杖をついて外の景色を観ていれば、無条件で自分だけの世界に閉じこもれるような気がする。 ・・・のだけど、今日は少し気になることがある。 『わたし』の席の隣に、空席があるのだ。 「よーし、席につけー!」 横目で空席を眺めていたら、勢いよく教室のドアを開けて、先生が入ってきた。 「今日はホームルームの前に、転校生ば紹介するぞ」 転校生というワードに、当然のようにクラスが沸き立った。 「しーずーかーにー!!」 赤いジャージの手が、パンパンと大きな音で打ち鳴らされると、少しだけざわめきが止んだ。 「よし」 先生は、チョークを手に取り、転校生のものと思われる名前をデカデカと書いた。 中性的な名前に、「男?」「女?」と、クラスがまたざわついてくる。 「さぁ、入って」     
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