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先生はチョークを置いて、ドアへ向けて手招いた。
先生に招かれて、静まり返った教室に入ってきたのは、実にひょろっこい、ほっそりとした男子生徒だった。
「自己紹介して」
「あっ、はいっ!」
鉛筆みたいなその男子生徒は、少しカールしたマッシュショートの前髪を触って、なよっと頭を下げた。
「大島楓です。東京から来ました。宜しくお願いします」
ニコッと、大島とやらが笑えば、クラスの女子たちがほんのりと頬を染めて息を飲んだのがわかった。
なるほど、『今どきの都会の男の子』は中性さをウリにするらしい。
「よろしくね!大島くんっ!!」
早速『都会から来た中性的な男の子』に声をかけたのは、クラスの女王的存在である、川島頼子だった。
彼女の一声は、女子の絶対。
すぐに女子達は歓声と共に手を叩き始めた。
「よろしくなっ!」
今度は、男子の中心人物であり、学級委員の高嶋賢治が、女子達の拍手に合わせて声を掛けた。
スポーツ万能、頭脳明晰でクラス一の人気者の彼に認められた大島は、星海高校三年二組に見事歓迎されたようだった。
「じゃあ、大島、さっそく席につけ。えっと・・・席は、あそこ、内田の横の席が空いとるけん・・・」
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