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マジか。
これはそのための空席だったのか。
「おい、内田!手ぇ上げてやれっ」
なるべく注目を避けたい『わたし』は、勘弁して欲しいけど、仕方なく手を挙げた。
「よし、じゃあ席について」
先生に肩を押された大島が、その身に注ぎ込まれる視線の中を、流れるようにサラサラと歩いて隣の席に腰を下ろした。
「よろしくね」
「あ・・・うん。よろしく」
窓の外を見たままでとりあえず返事だけ返した。
まだ転校生への眼差しが、大島の背中に張り付いているし、なによりも、『わたし』は、この『大島』という奴の顔を見たくない。
『わたし』はどうもこの、ひょろっこくて、いわゆるキレイめな顔立ちの『中性的男子』を好きになれそうにない。
隣の席のコイツは、男のなり損ないに見える。
男であることを無駄にしている奴だと、心底毛嫌いした。
これが、『わたし』と『大島楓』の最初の出会いだった。
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