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第四章 冬 ─ 春へ ─
「終わったぁ・・・」
一月十四日、志望校である県立大学で行われた、センター入試。
二日目の戦いを終えた僕は、心地よい疲労感に包まれながら、大学の玄関前で共に試練を乗り越えた大島を待っていた。
「お待たせ~!トイレめっちゃ混んでたよ!!」
濡れた手をハンカチで拭いながら、大島がこちらへ駆け寄ってきた。
「試験中チビらんでよかったね」
「さすがにそりゃないよ。まぁ、決壊寸前だったけど。それよりさ、出来はどうだった?僕はまぁまぁだったような気がしたんだけど」
「うーん、私もまぁまぁ・・・─」
言いかけたところで、やたらと大きな車のエンジン音が聞こえて、慌てて大学前のバス停を振り返った。
「あ、やべっ!バス来た!走れっ!!」
猛ダッシュで乗り込んだバスは、たった今試験を終えたばかりの学生で、すし詰め状態だった。
希望に溢れた顔、絶望に沈んだ顔、表情は皆そのどちらかで、前者は後者を気遣ってか、『出来た!』と口にするものはいなかった。
僕と大島も例外ではなく、話したいことは山ほどあったけど、隣の学生二人の顔を見て、乗車中はずっとウズウズする口を閉ざしていた。
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