赤き狼は子守をする

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「いやぁ、元IPAの方が護衛してくださるなんて、心強いですな」  依頼人指定のカフェで、商人という依頼人の金持ちそうな服を見ながら、 「任せてください」  俺は力強く頷いた。  国際警察軍、通称IPAを辞めて、フリーの何でも屋になって一年経つ。  この世界にある大小さまざまな国に対し国際法にのっとり、警察、軍隊の役割をするのが国際警察軍だ。実際のところ、IPAの連中も能力的にはピンキリだ。警察学校の入学試験に受かれさえすれば年齢制限もないし、俺のように身寄りがなくて喰っていくために入ったやつも多い。とはいえ、入って続けていけるかどうかは、また別の話だし、やはり世間的な評価は高い。  故に、元IPAの肩書きで、十八歳の若造が喰うには困らない程度に仕事がくる。 「それは、それとして……」  あぶらぎった頭をタオルで盛んにふきながら、依頼人が目線を下に落とす。テーブルのこちら側、俺の膝の上。 「……そちらは?」  この一年繰り返された質問には、もう慣れている。  隣の椅子に腰掛け、俺の膝の上に頭を載せて眠っているリリス。その頭を撫でる。 「私が面倒を見ている少女です。ご依頼の日当日は、預けて行きますのでご安心を。今日はちょっと、宿をとる時間がなくて連れて来てしまいましたが」 「……はぁ、まあ、なら、いいんですが」  依頼人は眉根を寄せたあと、 「くれぐれも、宜しくお願いしますよ」  その太った体を大儀そうに持ち上げながら、去って行った。  仕事を探して立ち寄った酒場でまわってきた依頼。腕利きの護衛を捜している、との言葉に、金策に窮していた俺は迷うこと無く名乗りをあげた。  内容は商人が隣街へ行商に行く護衛。隣街までの道のりは、最近山賊が出るらしい。それはいいんだけど、絶対ヤバい商人だよなぁ、あれ。金払いがいいから、もうなんでもいいけど。
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