赤き狼は子守をする

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「リリス」  眠ったリリスの頬をつっつく。リリスはうっすら目を開けた。 「……ソル兄ちゃん、お話終わったの?」  目を擦りながら、リリスは顔をあげると、座り直す。 「終わったよ。ほら、ケーキ残ってるんだから喰え喰え」  あのおっさんの奢りなんだから。  リリスは頷くと、ケーキに向き直った。それを見ながら、俺も残ったお茶を飲む。  さて、どうやって切り出したものか。  一年経ってもまだ慣れない。仕事の話を切り出すときは。 「……お仕事、いつなの?」  と、思っていたらリリスの方から尋ねてきた。 「あー。……明日、から」 「いつまで?」 「……二日ぐらい、かかるかもなぁ」 「ん、わかった」  リリスが頷く。恐る恐るそちらを見ると、やっぱりいつものようにちょっと泣きそうな顔をしていた。ああ、ほら、だから言いにくいんだよ。  リリスは俺の視線に気づいたのか、こちらを見ると、小さく微笑んだ。 「お留守番、できるから大丈夫」 「ごめんな」 「ううん。……いつもありがとう」  面倒見てくれて、とリリスが小さく呟く。  そういうことを言わせたくて、引き取ったわけじゃないのに。  何も言えなくて、仕方なくリリスの頭をくしゃりと撫でた。  一度、俺が切ったら変な髪型になって以来、切らせてくれない銀色の髪は、さらさらと指の間を抜けた。
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