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「何が『こんな風に』だよ。氷なんざどこにもねぇけど?」
「……そうか。いや、なんだ。俺は今まで猿と話していたつもりだったが、実のところはプランクトンに話しかけるという無為なことをしていたのだな。気づいたのならやることは一つ、研究資料として提出するべくお前を氷漬けにしてやるっ!」
真剣な声で叫んだブルーは大気中の水分を凍らせて無数のつららと氷塊を生み出す。それは彼の細長い指が動くのに合わせて宙を舞い、レッドの体を押しつぶそうと降り注いだ。そこに一分の隙もなく、避けることは絶対にできない。怒り心頭に見えて冷静に隙のない攻撃を繰り出すその手腕は確かに最強ヒーロー戦隊の一員といえる。
だが、ブルーが最強ならばレッドもまた最強だ。
瞳に熱意の炎を宿らせ、彼はその両腕に深紅の炎を出現させる。虫すらも危機を感じて逃げ出すほど明確な殺意を含むその炎は、今までに数多の怪人を消し炭にしてきた彼の十八番。ただただ純粋な火力を持つそれは単純明快にして最強に相応しい。
氷と炎。相反する二つがぶつかり、その余波は周囲へと飛ぶ。先ほどまで和やかな草花が広がる草原だったはずなのに、草は焦げ、地は凍り、早くも戦場と化した。
「あっ、あわわわわ……。ぴ、ピンク姉さんっ、あの二人をなんとかしてくださいっ! 僕じゃどうにもなりません!」
グリーンはヒーロースーツの仮面の奥で涙を溜めながら懇願する。
だが、
「止めるのはいいけどさぁ、今コメント返してる途中だから後でいーい? あとさ、あーしが戦ってるとこパシャってよ。最近フォロワー増えてきたんだけどぉ、一々つっかかってくるうざいのがいるんだよね。お前はピンク様の偽物だーってリプ送ってくるんだけど、さすがに写真見せつけりゃ黙るだろーしぃ?」
と、ピンクは実に適当だった。
「SNSなんて後にして早く止めてくださいよっ!」
「えー……。そこはさぁ、『はい、わかりました』でよくない? あーしもコメント返し終わったらちゃんと二人を止めるわけだしぃ、人払いしてんならどんだけ被害が出ても直せるじゃん。だったらいつだって変わんないでしょ。……うわっ、なにこのクソリプ。ブロックしよ」
あっけらかんとした態度のピンクは獅子唐ほどの大きさがある付け爪を器用に動かす。その瞳には携帯電話の画面に表示されたリプライしか映っていない。
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