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ガルヴァの頭の中では、今頃ヒーローと破壊騎士による問答が繰り返されているはずだった。決して相容れることのない光と闇。それでも、一度は互いの真意を測ろうと言葉を交わす。されどそれは決別に終わり、信念をかけて剣を、牙を向けあうのだろうと想像していたのだが……残念ながら、この現状はカオスの一言に尽きる。
自分本位で勝手気ままなレッドとキザで他人を見下しがちなブルーが傍若無人な力をぶつけ合い、紅一点というだけでなく五人の清涼剤であるはずのピンクは必死にSNSのコメント返しをしている。どうにか無駄な争いを止めようとしていたグリーンは愚痴と共に一度触れれば一生呪われてしまいそうな妖花を咲かせているし、この場を理解できるのは悪魔王をもってしても不可能だろう。
破壊騎士ガルヴァは、エラーを起こした機械のようにただ困惑することしかできない。
けれど、その困惑に終わりがないわけではなかった。
困るほどに惑わされるのなら問答無用に潰せばいい。黒い瘴気に包まれた黒剣を薙いでやつらの内臓をつぶし、足で首を踏みつぶして胴体と分かてば動かなくなる。最強のヒーロー五人組といえど、目の前の危機を危機と認識できないようなやつらに自分が負けるはずがない。
まずは、凝縮させた闇の力を放ってやつらを牽制してやろう。その勢いのまま、あそこで携帯電話をいじっている女を切り倒せば困惑が一つ減る。
そう考え、ガルヴァは手にしている黒剣を大きく天に向ける。大木を簡単にへし折れそうなほど大きい剣が見えなくなるほどの瘴気が上り立ち、それは一つに収束して闇の斬撃となる。触れた瞬間、あらゆる物質であろうとも微粒子レベルで分解してしまう闇の極地。『破壊』と『拒絶』の性質を持つガルヴァが得意とする技の一つだ。
「ぬんっ!」
ガルヴァは剣を振り下ろして闇の斬撃を飛ばす。それは真正面からぶつかり合うレッドとブルーの顔面寸前を通り、まっすぐにピンクの胴体を分とうと突き進む。
「んぁっ?」
間抜けな声を上げ、ピンクが顔をあげたときにはもう遅い。ガルヴァの斬撃は彼女の体を真っ二つに絶ち、傷口から血もでないほど鮮やかに切断した。地面に落ちてひび割れるのは彼女が手にしていた携帯電話。もう、それを操作してSNSアカウントを更新するものはいない
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