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『だが、最大出力を出せば脱出は可能だろう。』
拘束を受けたまま、ガルヴァは冷静に状況を分析する。
最大出力をぶつければ先ほど斬撃を受け止めたピンクを確実に倒せる。もし倒せなくとも、ヒーローが持つ力は一人一つだと聞いている。受け止めて返すだけの防御型は攻撃し続ければ必ず勝てる。
同じ理由で、グリーンも倒すことができるだろう。今までの中でやつが使ったのは呪いによる呪術ばかり。人払いの結界に、毒の妖花に、力を奪う拘束蔦。どれもサポート型であり、正面切っての打ち合いならば負けることはない。
問題はレッドとブルーだが、意外とあの二人こそ攻略は簡単だ。先ほどから続く戦いを見る限り、攻撃性と応用力に優れた力を持ってはいるが、その出力は鎧を砕くほどのものではない。あれだけ仲の悪いところを見るに、協力して攻撃してくることもないだろう。
頭の中で瞬時にシミュレーションし、勝ち筋を掴んだガルヴァは剣を握る力を強める。ここからが破壊騎士の本領発揮だ。草の根も残さないほどの破壊を見せてやろうと口角をあげた。
「……これより、破壊騎士の名に則って貴様らのすべてを壊し尽くすことを約束しよう。まずは手始めにこの拘束を解き、赤、青、緑、桃色の順に首を分つ。そして、それを悪魔王の手土産として持ち帰ろう」
邪悪なる宣言は続く。
「餞に我が名を教えてやる! これより貴様らを壊すのは、破壊騎士ガル――」
「ちわーっす。あ、なに、もう始まってる感じ? 俺邪魔しちゃった?」
軽薄な言葉がガルヴァの名乗りを遮る。それを口にしたのはレッドでもブルーでもピンクでもグリーンでもなく、集合に遅れたブラックだった。
「いやぁ、さっきまでバイトの時間だったから抜けられなかったんだよね。ほら、前に招待隠しながら花屋で働いてるって言ったじゃん? そこのバイト仲間にすっごいいい子がいてさ、話してるうちに雰囲気もいい感じになってるからいきなりバイト抜けるとか不誠実なことしたくなくってさぁ」
誰に聞かれるでもなく話すブラックは、なんと破壊騎士ガルヴァを背にしてべらべらと喋っていた。本部の使うテレポーテーション装置を使って現場に緊急参戦したのはともかく、それが敵の真ん前だということには理由があるのかもしれない。日ごろの行いが良いならば、これほど厭らしい場所に飛ばされることはないだろう。
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