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異界の地
此処は何処?あいつらは、何者だったんだろう。でも、今度こそもう終われる…。
此処は海。水の中。空気の無い世界。死ぬには、もってこいだ。
口の中から溢れ出すあぶくを見るのを最後に呼吸は苦しくなり彼女は意識を手放すーー
…筈だった。
どういう事?海の中なのに、呼吸が出来る。
驚きで開いた口からあぶくが溢れ出す。空気が消えない。
驚きはそれだけでは無かった。まるで水と一体になったかの様に、彼女の身体は透けていた。
どれだけの時間が経ったのか、彼女は唐突に悟った。
これは、罰なのかもしれない。痛みを感じない様に楽に死のうとした私への。そして、幼い頃溺死しようとし、また挑戦した私への嫌がらせなのだと。
悟った途端、頭は冷えてゆく。そして、泳ぐ事にした。この意味不明な出来事を考える事を無視して。彼女の目的は愚直までに変わらない。
目的地は定まらないが、ただひたすら死という安息を求めて。彼女は、とりあえず泳ぎ出した。
ずっと、ずっと…
陸に辿り着くのをただ願い、ひたすら泳ぎ続けた。
そして、彼女の願いが叶うのは男達と別れた1週間後の事だったーー。
ピエロの格好をした誰かは、笑う。
ああ、始まった。新たな世界が君を歓迎している。愛しい君を手放すな、と。
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