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コックの格好をした男は、フライパンを力強く振る。ジュージューと肉の焼ける音が聞こえ、芳ばしい香りが辺りに広がる。
「ふ、ふーん、ふふふふーん!…ら、ら、ら、ら〜♪」
男は鼻歌を歌いながら調子良く笑う。背後に近付きつつある、少女の存在に気づく事無く…。
一方、楓は匂いと鼻歌に誘われて着実に厨房へと近付いていた。
しかし、彼女は自分の目を疑う光景を目にする事となった。
彼女の目を奪ったのは広がる青い海ー
「何これ……どういう事?…ここは何処?」
楓の唖然とした声に答えたのは、男だった。
「ここは、マーフォクス船。一応、海賊船だ。」
楓は背後から急に聞こえた声に振り向くと、後ずさる。
「誰!?」
「誰…か。尋ねたいのはこっちだが、まあ、いいか。どうやら話は出来そうだ。…さて、君は海に沈んでいるところを私達に助けられた。何か、言う事は無いかな?」
「何で……」
「…ん?」
楓の急におかしくなった様子に訝しげに男は眉を寄せた。
楓は、男に背を向けると勢いよく走り出す。
今度こそ、目的の場所へと。
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