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プロローグ
ぼやける視界が映したのはどんよりとした
雲に覆われた空だったーー。
息の詰まる世界で彼女の意識は静かに沈む。しかし、土砂降りとなった雨音が彼女の耳に煩く届いたのか、彼女の閉じられていた瞼がぴくりと動いた。雨は、彼女の周りにバリアーでもあるかの様に彼女を濡らさなかった。
唐突に現れた傘をさしたピエロが笑った。
「雨は、君を迎えに来た。君はいずれ、選択を迫られるだろう。しかし、今はまだその時じゃあない。ゆっくり、束の間の平穏を楽しみな。まあ、その平穏が日常とは限らないが……。その時になったら会おう、楓。」
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