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序章
――すいません。息子を助けてください。
弱々しい声。命の灯火が今にも消えようとしている。
俺は無我夢中でバイクを放り出し、その小さな男の子を後ろから抱きしめると目隠しした。
見てはいけない。見せてはいけない。
人が死ぬのを初めてみた。目の前で炎に包まれていく。
男の子にはきっと見えなかっただろうが、音や熱は残る。
その日、彼の両親は炎に包まれて亡くなった。
ただの通りすがりの俺は、彼の目を隠すことしかできなかったんだ。
雲一つない澄んだ青空の下、黒い煙が俺の視界も奪った。
あの日から俺たちは、互いに目を押さえている。
見ないふり。気づかないふり。傷ついてるのも見えない。
どうしようもないほど好きな気持ちに目隠し、する。
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