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建築デザイナーとして会社を立ち上げたのは、渉を引き取る二年前だった。
主に大型施設のデザインのコンペばっか参加していたおかげで、三階建ての会社兼自宅を建てていたのも助かった。
一階のロビーに、渉の母親のピアノを飾っている。飾っている椅子の上には、渉の父親のサックスも並べている。俺には全然価値が分からねえが、定期的にメンテナンスと手入れを業者にお願いする。
その時渉は、受付に座ってその様子を無表情に見ていた。
「渉くん、すごく格好良くなりましたね」
仕事場へ向かえば、大体いつも渉の話になる。
渉を引き取ったとき、会社の女子社員たちに色々と面倒を見てもらったのが助かったから頭は上がらないし、感謝してもしきれない。
定期的に視察にきていた児童福祉員も、この女子社員がサポートしてくれることを好意的にみてくれていたので、なんとか俺が引き取ることになっとくしてくれたっけ。
「そうだな。あいつ、もう18歳だ。俺が引き取ったときまだ8歳のカギでさ。遠慮してご飯とか全然食べないし、皿とか洗うし、洗濯物取り込もうとか、掃除機かけようとかしてさ」
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