滞在

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 入院前は毎晩のように酒を飲んでいたが、酔いをきっかけに衝動的になったり、感情が昂ることがよくあった。それによって薬を飲み忘れたり、飲まなくともまともにやって行けると証明しようとわざと服薬せず、悪化させてしまった。  いまそれなりにまともな振りが出来ているのは、薬のおかげであって、治ったわけではない。  時計を見れば六時だ。少し早いが、飲み忘れるよりはマシだと思い、くたびれたスーツのポケットを探る。不格好に膨れた両のポケットから、それぞれ粉薬と錠剤を何種類か取り出す。  いくつもあるそれを、順繰りに開けて口へ含む。  翔が黙って差し出したグラスの水で、薬を飲む。その間に、空になった包みを翔は手早く片付けた。 「寝る」  眠い訳ではなかったが、再びソファへそのまま横になった。 「はい」  たった二音なのに、翔の返事はどこか温かく響く。実際どうかは分からないが、自分を分かってくれているように松岡には聞こえる。この声が聴きたくて、来てしまった。  翔が薄い毛布を身体に掛けてくれた。うっすらと感じる重みが心地よい。  目を閉じる。二人は何も話さなかったが、松岡の頭の中はまだ騒がしい。  久しぶりの外出は心に堪えた。  どうでもよい後悔と苛立ちが頭の中で一周すると、ようやく落ち着く。     
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