滞在

6/9
前へ
/49ページ
次へ
「昨日の残り物ですいませんが、よかったら召し上がって下さい。俺が作ったもの、口に合うか分かりませんが」  冷蔵庫の中からラップに包まれた皿を取り出し、レンジへ移そうとする翔を、手を振って止める。 「置いといてくれれば、食うとき自分でやるから」 「翔のメシ、旨いですよ。おととし免許取ったんで、いまは厨房任されてますから」  階段を軋ませながら、倫太郎がロフトから降りてくる。頭はぼさぼさだが、既に仕事着らしい作務衣に着替えていた。 ――すごいじゃないか。  褒めようと口を開きかけたところで、電話が鳴った。  素早く出た翔は、魚の種類らしきものを電話の向こうと相談する。電話を切ると、仕入れに行ってくると言って、出て行った。 「客がいない日は、旅館の電話はこっちに転送されるようになってるんです。俺たちが仕事に出てる間は鳴りませんから、ゆっくり過ごしてください」 「……朝から忙しそうだな」     
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加