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ロフトの壁際にはクローゼットが作り付けられ、中央には安っぽいダブルのベッドが置かれている。小さな窓もあり、狭苦しく感じなかった。天井が傾斜しており、奥へ進むにつれ、上体を屈めねばならない。
指を伸ばし、天井へ触れる。節の多い安価な杉板だが、屋根裏部屋のようで悪くない。自分が健全な子どもだったら、ここで寝るのを喜ぶだろうと思う。スマホから消去した『友達』も、これを見たらきっと喜ぶだろう。
ベッドに横になると、倫太郎がロフトのライトを消した。なぜか翔のところへ戻らず、ベッド脇へ腰を下ろす。出会った頃は目元を隠すように前髪が長かったが、いまは勤め人らしく清潔感のある短かさに整えられている。隠されなくなった三白眼が、何か企むように松岡の身体へ視線を走らせた。
「松岡さん、水でも持って来ましょうか?」
いやにしおらしい声だ。
「いや、いい」
松岡が断っても、倫太郎は離れない。むしろ、図々しくもベッドマットへ乗り上げてくる。倫太郎の手が松岡の腰を撫でた。
「……しましょっか?」
「俺がシたそうに見えるか?」
「全然」
倫太郎はくすりと笑って肩を竦める。その笑みに、色気が滲み出ている。
「大丈夫、翔も分かってますから。俺からの快気祝いみたいなもんですって」
「おい、いいって――」
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