夜1

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 呆れているうちに、倫太郎の手が股間に伸びた。慣れた手つきでズボンを下ろすと、項垂れたままの松岡を手の中へ収める。綺麗に切りそろえられた黒髪が、松岡の股間へ寄り、温かい口中に陰茎を含まれた。薄い舌が熱心に働き、強弱をつけて吸い、舐める。 「やめとけ。無理だ」  下腹の上で動く頭を軽く押したが、倫太郎は止めなかった。松岡は目を閉じ、試しに集中してみたが、熱が集まる兆しはない。  倫太郎は諦めることなく、芯の通らない陰茎を陰嚢と一緒に揉み、勃起を促すように扱く。しばらくして、倫太郎の眉根が困ったように寄せられた。やっと諦めたらしい。 「うつになってから勃ったことがねぇからな」  名残り惜し気に股間を撫でた手が、ようやく離れる。倫太郎はうーんと唸りながら、頭を傾げた。癖のない黒髪がさらりと眉を掠める。 「俺、もうその気になってんのに」 「アイツとヤっとけ」 「せっかく松岡さんが来てくれたのに、もったいないよ」  昔、松岡が二人の元を訪れた際に、三人でしたのを思い出す。翔に抱かれた後の倫太郎を抱くのが、たまらなく良かった。倫太郎も酷く乱れ、淫らに二人の男に足を開く姿に翔も興奮していた。  湧き上がった唾を飲み込み、頭を振る。あの頃の自分と今の自分では全く別だ。二人が頼ってくれていた自分はもういない。 「もったいないってなんだよ。俺の快気祝いだって言ってなかったか?」  期待されるのは嬉しいが、応えられない自分を直視させられるのは辛い。     
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