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「翔(しょう)、久しぶりだな。お前いくつになった?」
自分の変わり果てた姿を晒すのは面白くなかったが、それでも会いたくて来てしまった。
「二十五になりました。お会いするのは三年ぶりですね。さっき、電話もらったときはびっくりしました。あらかじめ言ってもらえれば、空港まで迎えに行けたんですけど。行ってもこんな車じゃ、かえって松岡さんに恥かかせてしまうかもしれませんが」
「恥かくほどのモン、俺にはもうないよ。金もなけりゃ、組の仕事ももうしてない。今はほかのヤツが回してる」
「……体の具合、悪いんですか?」
恐る恐る聞かれ、自嘲の笑みを松岡は浮かべる。
「昨日退院してきたとこだ。ちょっとお前のとこで養生させてくれ」
「もちろん、いつまでいて下さっても構いませんが、どこ悪いんですか?」
「あたま」
どこか得意げに答えた松岡に、翔は僅かに眉を寄せた。
「脳みそっスか?」
翔の言葉に、昔のチンピラ時代の口ぶりが垣間見え、松岡は笑みを浮かべた。やはり来て良かったと思う。
「そうそう、脳みそ。いい加減寒いから、早く車に乗せろ」
松岡は自分でドアを開けると、小さな軽自動車の後部座席に乗り込んだ。
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