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滞在
ログハウスは趣味で作ったというだけあって、広めの作りとはいえ、一部屋しかなかった。
家具は傷だらけの古いダイニングテーブルが、味気のない丸い椅子とともに申し訳程度のキッチンのそばに置かれ、部屋の中央には薪ストーブが据えられていた。
錆びて赤茶けたストーブの上に載せられたヤカンは、静かに湯気を上らせている。それを囲むように、三人掛けのくたびれたソファと、温泉宿でよく見るタイプの籐椅子が一つ。どちらも貰い物らしく、色が剥げたり、籐がほつれていたりしている。
高い天井を見上げると、ロフトに続く階段が壁に沿って作り付けられていた。十五畳ほどのワンルームにロフトが付いているなら、二人でも暮らせる広さだろう。
「お前らがデキてるって、雇い主は知ってんのか?」
「はっきり言ったことはありませんが、知ってると思います」
俯く翔は、少し恥ずかしそうに答えた。対照的に、倫太郎は一人掛けの籐椅子に腰を下ろし、飄々と補足する。
「ここ貸してくれたときに、これで聞こえる心配ないだろうって旦那さんが言ってたから、分かってるよ。俺の声、聞いたのかもね」
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