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失脚
一両きりの古い車体が、息も絶え絶えといった体で終点のホームに止まる。車両のドアも瀕死同然の遅さで、松岡を焦れさせた。
松岡がホームに降り立った瞬間、息が吸えないほどの猛烈な吹雪に煽られ、足元がよろける。薄いトレンチコートのポケットから慌てて手を出し、車体に手をついた。
痛いほどの冷たさに松岡は舌打ちをし、赤らんだ手を引っ込め、歩き出す。コンクリートの上で薄く張った氷が、松岡にさらに無様なステップを踏ませた。
その脇を、長靴を履いた老婆がえっちらおっちら追い越して行く。負けじと松岡も踏み出したが、革靴の底はつるつると滑るばかりで、幼児のような歩幅でしか進めなかった。
そうしている間にも横殴りの雪は髪を濡らす。トレンチコートの前を合わせて身を縮めたが、心もとない防寒具の下の体温はあっという間に奪われ、凍えた。
真冬の北国を歩くには、トレンチコートも革靴も不向きだと、松岡は降りた一歩目から痛感させられる。
腰の曲がった老婆からしばらくおいて、やっと松岡が改札を出ると、一人きりの駅員に、あからさまに訝しげな視線を向けられる。
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