ドラゴンハンター

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 展示場は、十畳程の広さの部屋で、壁一面の木製の棚には、万年筆、ネックレス、指輪、ペンダントトップ、小さなオブジェ、ナイフ、色々な種類の鉱石等が綺麗に整頓されて並べられていた。    クリス達が最初に見たのは、万年筆のコーナーだった。    黒檀に金糸の象嵌で蓮花や蝶の描かれているもの、漆に貝の象嵌で古代の文字が嵌め込まれているもの、スタッグ(鹿角)の原型の荒い表面を生かしたもの、アメシスト、オパール、ルビー、サファイア、エメラルド等の小さなカボションカットの散りばめられた豪華なもの……。    クリスの先輩にあたる 財宝ハンターのカイルの目の色が変わった。次第に鼻息が荒くなっている。   「これ! このアメシストには、レピドクロサイトのインクリュージョンが見える。アメシストも絶妙なファントムが素晴らしい。この小さなカボションカットで良くこのパーツがあったものだ」    カイルは鉱石が大好きだった。   「ふふ。良く解っているね。普通、宝石業界ならばインクリュージョンは単なる異物として価値の下がる原因になるのだが、私からしたらこのインクリュージョンも鉱石の魅力のひとつだ。内包物としてレピドクロサイト、ゲーサイトの美しく見える透明度の高い水晶は、加工した時にさらにその魅力を増す。ほら、こちらの万年筆なんかには、フローライトインクォーツを使用している」    クリスには、イマイチその良さは解らなかったが、職人とカイルの会話はどんどん熱を帯びていった。   「この、ファイアオパールの遊色も素晴らしい。赤と緑に混じって角度を変えて見ると少しの黄色と濃い青紫が浮かんで来る。宝石にもこのレベルは少ないだろう。」   「このファイアオパールは、元々は宝石だ。指輪だった物を縁があってちょっとね。あれだ、オパールならこのブラックオパールも……」    クリスは、石がどうこうよりも職人の少し話を濁した後に別の話に移った事の方が気になったが、周りのハンターは全く気にしていない様なので、こんなもんか。と思う事にした。
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