9人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、ドラゴンの……」
職人の目が光った。
「そう! ユニコーンといえば、最近は麒麟と同一視されているね。これは、文豪ゴミガワ・ドラゴンノスケの説だ。世間一般に広まったのは、君達ハンター、中でもモンスターハンターの影響だね。彼等はユニコーンを麒麟と呼んでいる。しかし、私は違うと確信している」
クリスは、やっちまった感でいっぱいになった。ドラゴン素材から離れた上に、興味無い話が長々と続く。
「古代画を見ればそれは明らかだ。ユニコーンは馬の形、麒麟は鹿なんだ。さらに、麒麟は麒という雄と麟という雌が対になって現れる。ユニコーンは単独だ。麒麟の伝説のある文化では、その土地の宗教上の意味なのか、二という数字を重視している様だ。それは、鳳凰とフェニックスについても……」
ナイフの話からは離れたが、どんどん話が脱線していく。マスターは、ユニコーンのナイフを購入する様だ。職人の話なんて聞いちゃいない。ただ、ナイフをまじまじと眺めている。
「あーっ!」
クリスは大声を上げてアクセサリーコーナーを指差して歩いて行った。
シルバーのスカルリング、ターコイズ、コーラルのリング、ピアス、ペンダントトップ、宗教の法具を模したもの、十字架、救世主等が並ぶその中に、ひとつだけボロボロの汚い欠けた石の嵌められた指輪がある。白と黒で模様が描かれた石の様だが、割れた小石としか言い様の無い状態の為、元がどんな模様なのかも解らない。土台部分も、シルバーが変色したのか艶が無い。クリスは思わず立ち止まってしまった。
「君は、若いのにこのウィービーズを知っているのか? 素晴らしい!」
さっきより興奮している職人を見て、クリスはさっき以上のやっちまった感に襲われた。
「い、いや。ウィービーズは初めて聞きます。けど……」
「けど、気になったと言う訳だね? フフフ。君は良い目をしている。ならば教えてあげよう」
クリスは、頷くしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!