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「ウィービーズは、ペチット自治区に古代から伝わる樽型のメノウに染色して模様を描いたビーズで、現代では天玉とも呼ばれている。」
あー、始まったよ。とクリスは思いながらも、このボロボロの汚い欠片に何故そこまで執着するのかという疑問は少しはあった。
「この作品に使っているビーズは、その古代オリジナルと呼ばれる、千年以上前の物だ。この欠けや傷、表面を見てみてほしい。石でありながらオイルを補充したレザー製品の様なとろみがあるだろう? このとろみは、長年、代々に渡り身に付けられて初めて出来るものだ。欠けては磨かれ、割れてからも大事に法具として宗教的な意味合いで使われ続けた結果であって、研磨剤で磨いて出来るものではない。要は、人為的に即席で作れないんだよ。この断面なんて、ゾッとする様な色気すら感じる。割れても尚、千年以上使われ続ける法具なんて中々無い」
興奮気味に話す職人と言い、仲間のハンター達の変な食い付きと言い、クリスは、自分がヤバイ大人達の中に混ざってしまったのではないかと不安になり始めた。
「このウィーの紋様は、他のウィーの紋様と照らし合わせて見ると、元々は2アイだった事が判る。さっきの麒麟等の様に、二と言う数字だ。これは、片方のアイは完全に消失して残りも半分近く欠けてしまっているから、比較的安く仕入れる事が出来たが、それでも尚この神秘的な雰囲気も醸し出す存在感。凄いと思わないかい? オリジナルのウィーは完全な形であればかなりの高額になる。ユニコーンの角よりもだ。」
神秘的どころか、ゴミにしか見えない。しかも石が欠けて削れて磨かれるってどんな使い方だよ? もはやクリスの頭には悪口しか浮かんで来ない。
「現代モノの天玉はたまに他の店でも見る事が出来るが、オリジナルは中々無い。ペチット製を売りにしている物も多いが、このオリジナルは私の考えでは、ペチット製ではない。古代に文明の発達していなかったペチットで、メノウを染色してアクセサリーを加工する技術があったとは思えない。ガラスビーズが奴隷とトレードされていた時代だ。子供や何かと交換しておきながら、天から降って来たとか誤魔化していたのだろう」
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