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「初診なんですけど」
初めて病院に行ったときの印象はけして悪くはなかった。
受付の女の子はまあまあ可愛く愛想も良かった。
「うちの病院は二人の医師がおりまして患者さんに担当医をお選び頂けます。院長先生か息子さんの若先生かどちらになさいますか?」
「じゃ院長先生でお願いします。」
そう聞かれた俺はやはり経験が豊富であろう院長を指名した。
若先生と言う呼び名は何となく頼りない感じもしたし。
「では診察前にレントゲンを撮って頂きます。」
看護師さんに案内されレントゲンの前に立たされ数枚の写真を撮ってもらい院長先生の診察の順番を待つことに。
待っている間あらためて待合室を見渡すと患者数は30人ほど数えられた。
やはりネットの評価が高いだけあって患者が集まるのだな
と集団催眠詐欺の被害者のように疑う気持ちは微塵もなくなっていた。
待っていた30人の患者のうち半数ほどはリハビリの患者だったようでさほど待たされず名前を呼ばれた俺は診察室へと入室した。
「よろしくお願いします」
診察室の椅子に座り医者に会釈。
穏やかそうな院長はやわらかな笑顔でレントゲン写真を見ながら説明を始める。
「ここの所の椎間板がちょっとずれてるのわかりますか?」
椎間板とは背骨の骨と骨の間のクッションのような平べったい軟骨だ。
言うとおり上下のそれと比べ院長が指差した椎間板はやや右に飛び出しているように見えた。
「人間の神経は背骨に沿って走ってるんだね。
で、この飛び出しているところが神経に当たって傷んでいるんですよ。」
無知な素人はこれだけの説明で充分納得させられる。
俺は医者の指示おりの薬を飲み毎晩襲ってくる激痛との闘いを7ヶ月続けていくのだった
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