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なだらかな山の中のひとつ
木々に囲まれた神社の石段が伸びていた
奥の鳥居からジャージ姿の一人の青年が降りて来る
額にたっぷりの汗を滲ませたその青年は石段を降りきると
踵を返し深く一礼をしたが
なぜか
来たはずの石段を再び登り始めた
そして再び石段を降り切り
同じように踵を返し深く一礼をすると
また石段を登り始める
その動作は、まるで同じ映像を継ぎ足したかのように繰り返される
何度でも何度でも同じように
青年が降りてきた
これで何度目だろう
いや、もう何十度目になるのだろう
そんな青年を囲み響く蝉の鳴き声は
まるで終わりのないアンコールのように青年の背中を石段の奥へと押しやった
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