厄災は快楽と共に

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 互いに好きで、両思いだと喜ぶのも束の間、実はどちらもタチ役だったとは。  体格的には互角だし、自分が主導権を握れば思いどおりだったはずだ。だが伊織に素早く帯で後ろ手に縛られ、動けなくされた。  響悟は伊織の意のまま、たっぷりと愛されている最中だった。耳元で、あの美声が響悟と呼び捨てた途端に、魔法にでもかかったかのように動けなくなった。稽古の疲れが抜けきらない上、酒に酔い、伊織との楽しいひと時や、綺麗なしぐさや可愛らしいところにも酔っていた。こうなってしまったのは大誤算だ。抱きたいと思っていた相手に尻を狙われていたなんて、驚きでもあり恐怖でもある。 「貴方は後ろを使ったことがないのでしょうから、徐々に慣らしていきますね。……大丈夫、気持ちよくなりますよ」 「いやだ! 俺はゲイだって自覚したときからずっとタチだったのに! 今更ネコなんて無理に決まってるだろっ!」  後ろ手に拘束されてしまっては抗議しても転機はない。冷笑を浮かべ、伊織がとんでもないことを言った。 「貴方だって今まで犯した方に今の私と同じような巧いこと言って抱いてきたのでしょう? 私は今、貴方が初めてだとはっきり知れて燃え上がっていますよ」  墓穴を掘ったと後悔した。しかし時すでに遅い。胡坐をかかされ、前がすっかり開いた浴衣の合わせを左右の肩までずらされる。  色っぽいホクロの唇が柔らかく響悟の耳朶を食む。びくりと背中が撓る。 「ヒッ!」  仰け反った響悟の胸を両手でゆっくりとなでられる。感じたことのない肌触りが、響悟の脳内を支配しはじめる。 「あっ、い、いや、だ……」 「感じているのですね。可愛いですよ」  囁かれるたび、響悟の体内では時限爆弾が仕掛けられたように疼きが走る。そして中心へ血流が集まる。感じたくなんかないのに、心と体が別物になったみたいだった。響悟の正面に回った伊織が響悟の膝を割り、上目遣いにほくそ笑んだ。
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