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「気づいていたよ。その花は、ジニアだよね?」 私がそう答えると、響葉はそうだよ、と言った。ジニアの花言葉は、不在の友を思う。それを見れば、先生は響葉が相田さんの自殺で仲村さんに恨みを持ち、仲村さんを殺したと考えるかもしれない。多分、先生はそうは考えなかった。私よりも先に自殺だと気づいていたはずだ。何故、先生はそのことを言わなかったのか。それは、明白なことだと思う。 「これで、事件のことは全部分かったでしょ。酷いよね、二人とも。私に何も言わずにいなくなっちゃうなんて。あの二人は、何もしてあげられなかった私を恨んでいるだろうね。」 「違うよ、それだけは違う。二人とも、少しも響葉のことを恨んでない。むしろ、二人とも響葉に感謝しかしていないんだよ。」 私がそう言うと、響葉は驚いた顔でそんなの嘘だよ、と小さな声で呟いた。 「今日はそれを伝えるために呼んだんだよ。用具室で、仲村さんが響葉に宛てた手紙を見つけたの。仲村さんは、響葉にもう一つ手紙を書いていたんだよ。分かりにくい場所にあったけど。」 私はそう言って、響葉に手紙を渡した。それはシンプルな白い紙に長文が書かれている簡素なものだった。でも、そこには仲村さんの思いが詰まっていた。
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