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職員室に行くと、先生はまだいた。私が手を振ると不機嫌そうな顔で廊下に来た。
「また何か用か、神崎。私は忙しいんだけど。えっ?」
橘先生は、響葉がいることに気がついた。すると、黙り込んでしまった。響葉もすごく困った顔をしていて、居心地の悪い空間になった。
「先生に渡したい物があって、来たんだ。響葉は暇そうにしていたから、連れてきちゃった。」
「渡したい物?」
不思議がる先生に響葉と同じカキツバタの栞を渡した。
「これは、仲村さんからだよ。手紙の近くには、実は二つ置いてあって、一つには水野さんへ、もう一つには橘先生へって書かれていたの。先生なら、花言葉分かるよね。仲村さんも相田さんも、二人が前に進むことを願っているんだよ。だから、もう後悔なんてしなくていいんだよ。」
橘先生も、響葉と同じように驚いた顔をしていた。そして、目が少し涙目になっていた気がする。
「そっか、ありがとう。花を贈るって、随分と変わった奴らだよな。水野、また前みたいに手伝ってくれるか?」
「はい、手伝います。温室の取り壊しは、中止になるんですか?」
「分からない。中止にさせる。私が何とかする。」
そう言って笑った。先生が何とかするって言ったら、何とかなるような気がしてくる。むしろ、上層部の人が気の毒になってくる。私たちが帰ろうとすると、先生は私を呼び止めた。
「神崎、ありがとう。水野は、これでもう大丈夫だろうな。」
「心配していたなら、自分から声をかけたら良かったのに。先生は、私よりも早くから気づいていたでしょう?」
「それは、どうかな?それに、落ち込んでいる時は友人の言葉の方が響くだろう。良くやった。」
「私は探偵だからね、当たり前だよ。」
先生にそう言って、私は響葉と吉田の元に向かった。
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