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その後響葉は、私たちに悩みを打ち明けてくれた。 「すごく悩んで、学校を辞めて通信の学校に通おうとも思った。だけど、二人が助けてくれたから頑張る。私はここに残る。残って、勉強頑張って、大学に行って、葵や妃莉みたいに苦しんでいる人を助けられるような職に就くよ。本当にありがとう。皐月ちゃんも香織も、二人とも探偵になったら?向いていると思うよ。」 冗談めいた口調でそう言って、響葉は去っていった。 今度は後日談を話そう。 その後、響葉はまた温室に行くようになり、先生とも仲良さそうに話すようになった。辛い過去を背負っても、それを共有できる人がいる限り、二人は大丈夫だろうと私は信じている。現に、十年後の今も二人は仲がいい。響葉は卒業してからも、相田さんと仲村さんの命日の日には、学校を訪れているらしい。その度に先生と色んな話をしているみたいだ。 温室が残ったのは、橘先生のお陰だ。橘先生が校長や教頭などの上の人間を説得し、温室には今も様々な色の花が咲いている。それに、園芸部が出来て、温室の花の管理をするようにもなった。仲村さんが残したかったものは、以前よりも良い形で残ることになった。 私はというと、小さな探偵事務所を自分で作り、忙しい日々を送っている。別に大それた事件を扱うわけじゃないけど、今の生活が気に入っている。もちろん、吉田は助手として働いている。まさか、あの事件がきっかけで本当にこんな未来が来るとは、私も吉田も思っていなかったんだけど。 響葉は夢を叶え、臨床心理士として病院で働いている。響葉に一番似合っている仕事だと私は思う。 十年経った今でも、高二の頃に起きたこの事件をよく覚えている。 青春は辛く、悲しいものだが、そこには優しさがあると私は信じている。 (Fin.)
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