ある思索

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ある思索

 皇帝がマントを翻す。  空を編みこんだそれは、裏地に美しい星空をたたえている。  僕はそれに手を伸ばす。  ああ、この背に翼が生えて、僕の身体が浮き上がる。  さあ行こうじゃないか、果てしない旅へ。  冷たい宇宙の奥の奥、月より太陽より、天の川の真ん中よりも更に先。  未だ人類の目にしない、どんな天文台のまなこよりも先へ。  ふわりと、弱く、強く、身体を空中に持ち上げる。  大気の層を超えると、世界は色を一変させる。  暗くて、黒くて、星々は光り輝いている。  それがまた眩しくて、それがまた美しくて、僕は目をそらす。  見ていると目を痛めてしまうから。見ていると心を焼いてしまうから。  弱い心が、弱い感性が、魂が、重力に引っ張られて落ちてしまう。  閉じたまぶたが、暗くなる。  目を開けると、ニヤニヤ笑う僕が僕を見ている。  僕の腕を持って引っ張り上げる。  「宇宙の奥の奥まで行くんだろ?」  僕は僕に引っ張られながら、まばゆい暗闇を飛び回る。  ある星では、全てが原始のままだった。  ある星では、全てが無機質になっていた。  ある星では、草花が美しく咲き乱れて、風に吹かれていた。     
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