一輪のカーネーション

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僕はそのまま頭を下げる。 「母さん、ごめんなさい!今まで何度も何度も頭下げさせて!もうそんなこと、させないから!」 母さんは、ぼくの頭をそっと撫でる。 「いいんだよ。分かってくれたならいい。バイトで疲れたろ。お風呂いっておいで。もうすぐ、ご飯が出来るから」 母さんは、父さんが事故を起こす前から優しくて、父さんが事故を起こしてからも優しくて、人を殴り続けた僕のために何度も頭を下げて、抱き締めてくれた。 母さんは、いつまでも優しい。 その優しさに甘えていたのは僕だ。 味噌汁の匂いが漂う中で僕が数滴、涙を流したのは僕しか知らない。 その涙をお風呂で洗い流してから夕飯をいただこう。 母さんと一緒に。 了
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