220人が本棚に入れています
本棚に追加
その瞬間、ピタッと止まる幸隆の身体。
イルがしたその小さな仕草が幸隆にはちゃんと伝わったようで、幸隆はイルを見ずに前を見据え、こう告げてくれた。
「俺はお前だけだから。何があろうと……」
何があろうと---その言葉にイルは涙を流した。
幸隆にバレているのかバレていないのか分からないけれど、そんなの気にする事もできないくらいその言葉が嬉しくて、ぽろっと涙が出てしまったのだ。
幸隆はそんなイルを見る事もなく無言で隣にいてくれて、そっと優しく手を引き、またゆっくりと歩き出した。
(このままなんて駄目だ……僕は幸隆の特別になりたい……)
もっと、今よりも。
イルは前に愛永に言われた言葉を思い出し、心の中で自分にエールを贈る。
そして、幸隆に自分の正直な気持ちを伝える決意を固めた。
最初のコメントを投稿しよう!