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そして、フェンス越しでイルにこう聞いてくる。
「どうだった?」
「え……?」
「俺の活躍」
そう言われ、イルは伏し目がちに答えた。だって、幸隆の目が見れない。
「え? あっ、良いんじゃない」
「それだけかよ」
「そ、それだけだよ……」
本当は具体的に話したかった。何処が凄くて何処がかっこよかったか。なのに言えないのは、隣にいる大樹のせいだ。大樹のせいで試合を堪能する事が出来なかった。
「幸隆お疲れー! 最後の内野安打も素敵だったよー! 昔より足速くなったよねー! かっこよかった!」
すると、大樹の横で、ルイはイルに視線を向けていた幸隆の気を引こうとそう大きな声で話し始めた。
その声に無視なんかしない幸隆は、ルイの方に行き「ありがとう」と感謝の言葉を述べていた。
そんな二人に、野球部の選手達がまた囃し立てる言葉を投げかける。
「おおっと! 幸隆選手、彼女の前だと照れて言葉は空振りか!」
「いやいや、夜になると豹変するんじゃないですかー。甘ーい言葉を彼女にだけ話すって可能性もありますね」
「うおっ! 夜の幸隆とか獰猛過ぎて孕んじゃうぅ」
「孕まれたぁーい」
なんて言って揶揄いながら、幸隆の怒りを喰らう選手達。
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