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ルイは幸隆が見えると人懐っこく寄って行き、幸隆の腕をギュッと掴んだ。
「幸隆おかえりー。待ってたよー」
そう言って、幸隆に満面の笑みを贈るルイ。頬と鼻は寒さで赤くなり、その顔を見ただけで男心をくすぐるようで、周りの人間はもうルイに夢中だった。〝可愛い〟の連呼の嵐。
「もー、待ちくたびれたよぉー」
試合が終わってルイの姿も大樹の姿も無かったと思ったら、ルイはイルよりも先に幸隆と合流する為に先回りして出待ちしていた。そのせいで、声を掛けるタイミングを逃したイルは、どうしよう……と校門付近で困惑する。
でも、そんなイルの状況を知らないルイは、野球部の選手達に笑顔で挨拶をし始めた。
「いつも幸隆がお世話になってます」
「あっ、どっどうも」
野球部の選手達は、突然ルイに話し掛けられて嬉しかったのか、皆、頬が緩んでいた。
「皆、とってもかっこよかった。試合見てたら私も日本の高校に入学しとけば良かったーって思えて来ちゃったよー」
「ル、ルイちゃんは日本の高校じゃないの?」
「うん。海外の高校だよ」
「へー、すごいねー」
話しを聞いていると、会話の内容はルイの事で持ちきりだった。皆、海外から帰国したばかりのルイに興味津々になっていた。
だから、尚更イルはその中に入る勇気が無くて、校門に近付いて来る幸隆達に気付かれないように、そっと身を隠してしまった。
「ルイ、俺イル探すから先帰ってろ」
けれど、幸隆だけはその会話に夢中になる事なく冷静で、いつも校門で待つイルがいない事に気付き、そうルイに言った。
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