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それを聞き、ルイは歩みを止めてニコッと笑い、幸隆に嘘をついた。
「イルなら先に帰ったよ」
「え……? 帰った?」
「そう。なんか、大樹が帰国してるから久しぶりに話したいって言って二人で帰った」
「それ、本当か?」
「うん。本当」
そう言って、ルイは幸隆の腕を掴み、早く帰ろうっと先を促した。
幸隆は信じられないと言うような目をしていたが、イルがいつもいる場所(校門)にいない事を見て、信じてしまったようだった。
「後でメールするか……」
そう呟き、幸隆はルイと共に野球部達と校門を通らず裏道へと曲がってしまった。
校門の奥の方でひっそりと息を殺して隠れていたイルは、そんな幸隆達の横顔を悲しい気持ちで見詰め続ける。
「行っちゃった……」
なんでいつもこうなのだろう。ルイの発言や行動に振り回されているはずなのに、間に入って何かを言う勇気が全く湧かない。
ルイがいない時はちゃんと自分でいられるのに、ルイの前だと一歩引いてしまう自分がいる。
それが何故なのか自分でも分からない。
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