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でも、もしかしたら、イルの自分よりも誰かを優先してしまう性格がそうさせるのかもしれない。
「はぁー……なんかな……」
幸隆は自分の物---誰にも渡さない。そんな気持ちがルイの行動や発言から伝わってくる。
イルだって内心ではそう思っている。
幸隆を誰にも渡したく無い。寄せ付けたく無い。自分の物だと言いたい……けれど、幸隆は誰の物でもない。
それに、幸隆の未来は誰もが注目するスター街道まっしぐら。そんな人の隣にこんな自分が本当に相応しいのか……そう思うと涙が出そうになる。
自分なんかよりもルイの方が幸隆に相応しいのではないだろうか。それを、幸隆はまだ気付いてないだけで、これから先気付く時が来るのではないだろうか……。
そう、イルはルイが現れてから思うようになった。
こんな自分をいつまで幸隆は好きでいてくれる? そう思うと足が動かなくなり、イルは校門の前でしばらく動けなくなった。
「おい」
「え……?」
「やっぱりいた」
声が聞こえた。幸隆の声だ。イルはその声に反応して下を向いていた顔をパッと上に上げる。
「な……んで……?」
そこには幸隆が鼻を赤くして立っていた。
「なんで? お前が俺を待たずに帰るわけないって思ったから探しに来た」
そう言って、幸隆はイルの冷たくなった両手を優しく掴んだ。
「うわっ! 冷てぇ! まさかずっとここにいたのか? なんで連絡しなかったんだよっ!」
「ご、ごめん……」
「いや、悪い。俺が悪いんだな……こっち通らなかったから……」
「ち、違うッ。僕が……」
声を掛けなかったから……そう言おうとしたが、幸隆が気にすると思って言えなかった。
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