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そんなイルの言葉を聞き、幸隆は「僕が?」そう聞いてくる。その言葉に、イルは何でもないと答えた。
その返答を聞き、幸隆はイルの冷たくなった頬をそっと触る。
「ん……」
その少し温かい温もりに、イルは心からホッとする自分を素直に感じた。
「ルイがあいつ……大樹だっけ? そいつとイルは先に帰ったって言ったんだけど、なんか信じられなくてさ……」
「え……?」
「お前が待ってないって絶対に無い。そう思って、ルイを家の近くまで送ってから戻って来てみた……そしたら、やっぱりお前がいた……」
幸隆はそう言うと、続けて小さく「ごめん……」と、イルに謝って来た。
「なんで幸隆が謝るの?」
イルは自分を責めている幸隆にそう笑みを向け聞く。そして、汗ばみ、冷たくなった頬にそっと触れた。
(走って来てくれたんだ……)
試合が終わって疲れているはずなのに、イルがまだ学校にいると思って走って戻って来てくれた。
それを想うと涙が出た。
「っ……」
「なっ、さっ寒いか!? そっ、そうだよなっ。早く帰るぞっ」
幸隆はイルが寒さに辛くなって泣き出したと思ったのか、そう言って慌てだした。
そんな幸隆を見て、イルはクスッと笑ってしまう。
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