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その声にビクッと反応してしまったイルは、一呼吸置いて上を向く。
「た、ただいま」
「おかえりー。遅かったね」
そう言ってルイは下に降りて来た。
「うん、ちょっとコンビニ寄ってて……」
「一人で?」
「え……? う、うん」
「ふーん……」
ルイはそのままキッチンに向かい、冷蔵庫から紙パックのオレンジジュースを取り出し、そのまま口を付けた。そして、イルにこう聞いてくる。
「ねぇ、幸隆と一緒だったんじゃないの?」
「え……?」
「幸隆さ、私とバイバイしてから来た道戻って行ったから……あんたを探しにでも行ったのかなって」
女の勘。その鋭さに、イルは一瞬言葉が出なくなる。
「さ、さぁ……忘れ物でも取りに行ったんじゃない?」
そう言って、自身の部屋に行こうとしたイル。そんなイルを阻止するように、ルイが大きな声を出した。
「幸隆、クリスマスは野球部の人達と会わないってッ」
「!」
「今日野球部の人に聞いたら……誘ったんだけど予定があるからって行けないって断られたって言ってた」
「えっ、あ、そうなんだ……」
「ねぇ、その日……あんたと会うんじゃないの?」
「え……?」
「違う?」
ルイはそう言うと、泣きそうな顔でイルを見詰め、そして、ゆっくりとイルの方へと近付いて来た。
「それは……」
イルはどう返答するか悩み、口籠る。その反応は肯定しているのと一緒だけれど、ちゃんと口にするかを悩んだのだった。
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