第8章 白いワンピース

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 二日前からあまり眠れなくてどうしようかと思ったけれど、こう言う時に漫画の力を借りるべきだと思って手を伸ばした。それが良い効果が出て良かったと思う。 「白いワンピースに、このベージュのロングコートかな」  今日は幸隆が選んだ白いワンピースが主役になる服装にと決めていた。  女装で会うのなんかもう何百回もあるのに、今日はいつもより緊張して、アクセサリーや小物に悩んでしまう。 「うーん……バッグはこの白い皮の奴かな」  あと、ヒールも白。そう決めたイルは、シャワーを浴びに部屋を出ようとドアに手を掛けた。  すると、ドアを二度叩く音がして、返事をする前にルイが扉を勢い良く開き、バッタリと対面する形となってしまった。 「もう出掛けるの?」 「う、ううん。まだだよ……今からシャワーを浴びようと思って」 「ふーん、そんなんだ」 「る、ルイは? もう出るの?」 「え? あ、まだ。ちょっとあんたに頼みたい事があって呼びに来たの」 「え……? 僕に?」 「うん」  そう笑みでルイは言うと、イルをルイの部屋へと招き、椅子に座らせた。 「た、頼みたい事って?」  イルは久しぶりにルイの部屋に来てキョロキョロと周りを見渡した。子供の頃に何度か入った事はあるが、ルイがいない間は一度も入った事は無かった。  何故なら、部屋を片付けたり換気していたのは使用人達が順番にしていたので、イルがルイの部屋に入る用は無かったのだ。
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