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このまま過ぎるのを待ち、ようやく当日になった。
なったはずなのに……。
「どうしてイルなの? どうしてイルを選ぶの……?」
「ルイ……」
「私の欲しい物は全て私の物になって来た。その為に努力だって、たくさんたくさんした。……なのに」
「ルイッ! イッタっ……」
ルイに掴まれた手首が締め付けられる。そして、ドンッとベッドに突き飛ばされた。
「幸隆は私の! イルにはあげない!」
ルイよりも小柄で体重も軽いイルは、簡単に吹っ飛んでしまい、ルイが部屋を出て鍵を掛ける音を聞き、慌ててドアに向かった。そして、ドアノブを掴み、何度も激しく動かした。
でも、鍵は頑丈に掛けられ、ドアノブはビクとも動かなかった。
「る、ルイ!? なにしてるの!? 開けてよ!」
まさか鍵を掛けられるとは。いや、部屋が外から鍵を掛ける事ができた事自体、イルは知らなかった。
だって、イルの部屋にはそんな機能はない。
「イル知らなかったでしょ? 私の部屋だけ鍵が掛かるの」
「し、知らないよっ!」
「そりゃそうよ。お利口なイルには、そんなの必要無いもの」
「え?」
「昔、子供の頃よ。夜中に抜け出してたの使用人バレて、ママに鍵を付けられたの」
「そ、そうなの?」
「イルは大人しく寝てるのに、私は寝るのが嫌で遊びたかったから。ほんと、じゃじゃ馬女」
そう言って、クスクスと昔を思い出し笑うルイ。そして、その鍵を付けられた次の日に幸隆に言われた事をイルに告げる。
「でも、幸隆だけはこんな私をじゃじゃ馬なんて言わなかった」
「え……?」
「鍵を付けられた次の日、学校で幸隆にこれから大人しくしようかなって言ったの。そしたら……幸隆なんて言ったと思う?」
「……分かんない」
「お前が大人しくなる必要は無いだろ。ただ、楽しい事を見つけるのが得意なだけだからって……そう言ってくれたの」
その時言われた言葉がすごく嬉しくて、ルイは自分を変える事なく、ありのままでいる事を決意できたのだと言った。
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