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それが聞き入れてくれたのか分からないが、大輝の身体がピタッと止まり、身体を起こした。
「あの男、今頃ルイを抱いてるよ。それでもあっちを選ぶの?」
「うん……」
それでも、幸隆に自分の気持ちを伝えたい。
手遅れでもそれでも、それでもそれでも……伝えないといけない。
自分の口で、自分の言葉で、自分の素直な気持ちを全て言わないといけない。
「チッ。なら、俺のこれしゃぶってよ」
「え……?」
「ここから出たいんでしょ? なら、奉仕してよ先輩」
そう言って、大輝は猛ったペ◯スをジーンズ越しにイルに触れさせた。
その獰猛さにイルは恐怖に身震いしたが、イルが選ぶ選択は一つしかないとだけは分かっていた。
「っ……分かった。する」
そう言って、イルは震える手で大輝のジーンズのファスナーに手を掛けた。
でも、その手を大輝が掴む。
「あいつの為ならなんでもできんだね……」
「え……?」
「あー、もう良いよ、行きなよ。ほらっ、鍵は閉めてないからさ……」
「大輝……」
「俺、先輩の笑った顔が好きなんだよ。だから、そんな顔見たくない……」
「ごめん………」
「なんで先輩が謝るの? いいよ……俺も悪いし……」
「大輝……ありがとう……」
イルは大輝に感謝の言葉を述べると、着替えも上着も羽織ることもせず、部屋着のまま勢い良く家を飛び出し、走った。
擦れ違う人達はイルの部屋着姿に驚き、二度見する。
それもそうだ。この真冬の中、コートも羽織らず、ピンク色のふわふわした部屋着だけを着て走っているのだから。
「はぁっ……はぁはぁ……っ」
吐く息が白い。なのに、身体は熱い。あと、心もだ。
「ゆき…ちか……っ」
イルは走る歩みを一度も止めず、幸隆と待ち合わせをしていたあの場所へと必死に走った。
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