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側にいたい。肩と肩が触れ合えるくらい近くにいたい。でも、それだけじゃ足りない。それよりも、もっともっともっと近くにいたい……そう思い出したら友情なんて言葉では収まりきれなくて、これが友情とは違う好きだと気付くのにも時間は掛からなかった。
「でも……僕っ……どんなに頑張っても女の子にはなれないから……幸隆には相応しくないってずっと思ってた……」
どんなに化粧を頑張っても、服装を着飾っても、肝心な物は変える事はできない。
性別を変えたとしても幸隆の子供は産めない。
そう思う度、幸隆への気持ちに応えるべき人間に、自分は相応しく無いと思っていた。
「ルイみたいに……自分の気持ちを押し通す事もできないし、幸隆には天邪鬼だし……我儘だし……好かれる自信がずっと無かった……」
幸隆が好きだと言ってくれる度、こんな自分なんかと思ってしまう自分も嫌だった。でも、どうしようもないからと、幸隆の気持ちに答えを出す事もできなかった。
こんなにも愛されていて、こんなにも愛しているのに。
「でも……無理。誰にも渡したくないっ……幸隆だけは……駄目」
「俺だけは……駄目……?」
「うんっ」
幸隆だけは駄目。誰にも、ルイにも渡したくない。
他の物ならなんでもあげる。全てあげる。でも、幸隆だけは誰にも渡さない。渡せない。
「幸隆……こんな僕でも良いなら……あの……えっと……」
「付き合って……」
「え……」
「こんな俺と……俺で…良いなら……」
「っ……」
「ずっと幸せにするから……愛するから……」
「幸隆……っ」
幸隆の瞳から溢れる涙。その涙に、イルは嗚咽しながらまた泣いた。
「俺と付き合ってくれ……」
そして、その言葉にイルは大きく頷いた。
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