第10章 二人の熱量

3/25
前へ
/161ページ
次へ
「だろうな。俺もかなり探したし」  その言葉を聞き、イルは嬉しさに笑みが溢れた。  今日の為にホテルを探してくれていたと思うと嬉しかったのだ。 「そうなんだ。なら、パパもママもここにこんな素敵なホテルあるの知らないかも。知ってたら連れて来てくれると思うし」  と、思った事を話したのに、その言葉を聞いた幸隆は珍しく大爆笑。 「ハハハッ。それはどうかな。若い時は使ってたかもしれないけど」 「え? なんで若い時?」  どうして? とイルは小首を傾げ幸隆に聞いてみる。すると、幸隆の口からとんでもない言葉が飛び出した。 「そりゃ、ここラブホだから」 「えっ!? らっ、ラララブホ!?」  まさか、こんな綺麗でお洒落な場所がラブホテルなんて。イルは驚きのあまり声が裏返る。  そんなイルに、幸隆は少し恥ずかしそうにしながらこう言った。 「そう。お前が好きそうな所探してたんだよ……前から」 「前から!?」  前からとはいつからだろうか。気になる。 「ねぇ、それっていつから? つい最近? それとも、ずっと前から?」  イルは恥ずかしそうにしている幸隆に、目をキラキラと輝かせながらそう言って詰め寄った。 「ねぇ、いつから。いつから探して……」 「あー、もうこの話し終わり。ほら、着いたぞ」 「えっ? あっ、わあっ!」  タイミングが良いのか悪いのか、エレベーターが最上階に着き、扉が静かに開いた。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

218人が本棚に入れています
本棚に追加