第10章 二人の熱量

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 その瞬間、幸隆はイルの手を引き、さっき選んだ部屋へと一直線に向かい、躊躇いもなく部屋のドアを開き、部屋の奥へと進んだ。  すると、その部屋の奥には、イルが驚くほどの光景が目に飛び込んできて声が出た。 「うわー! お姫様ベッドだー! 可愛いー!」  部屋に入って直ぐに目に飛び込んだのは、部屋の真ん中に大きく主張していたピンク色の姫系ベッドだった。  白いレースの天蓋カーテンがあしらわれ、大きなクマのぬいぐるみがクッションの間に二体並び、イル達を迎えてくれていた。  その可愛いベッドや壁紙、アンティークに、イルの心はガッチリと掴まれる。 「お前の部屋もこんな感じだから、こういうの好きかなって」 「うん! 大好き! 幸隆、ありがとう!」  イルは早速クマのぬいぐるみを抱き締め、幸隆に満面の笑みで感謝を述べた。  こんな所で一日過ごせるなんて、夢のようだ。それに……。 「ここ、最上階だろ? ほら、外見てみろ」 「え? 外……? わぁ! 綺麗ッ!」  幸隆に外を見てみろと言われ、イルはクマのぬいぐるみを置いて外を見た。すると、幸隆がボタンを押した瞬間、薄いレースカーテンが自動に動き、一枚の大きな窓が現れて外の景色を露わにした。  その景色に、イルはまた心を掴まれる。 「こっからあの巨大ツリー見えるんだって。あと、ビルとかの明かりが光って、夜は明るいままらしい」 「そうなんだ! でも、こんなに光があると外から見えちゃったりして」 「さー、どうなんだろうな」 「どうなんだろうなって……んっ」 「見せちゃう?」 「……馬鹿」  幸隆は意地悪そうにそう言うと、イルを背後から抱き締めて首筋にキスをした。
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