最終章 幸隆だけは、駄目

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 幸隆と付き合い始めて一週間。  イルはようやく進学先を決めた。 「イルも県外に行っちゃうんだね……」  そう……幸隆がこれから本拠地とする場所の近くにある美術大学。そこに進学する事に決めたのだ。  と言っても、まだそこに行けるか分からない。でも、ようやく自分が何をしたいか、どうしたいのかは決まった。 「うん。ようやくね……」 「決まって良かったね」 「そうだね……」  幸隆の口からは、一度も〝一緒に来い〟とは言われなかった。でも、それは何故なのか、初めて身体を繋げた後にイルは幸隆にそっと聞いてみた。すると、幸隆は---お前が自らの意思で俺の所に来るのを選んで欲しかったから---と、言っていた。  それを聞き、イルはその場で幸隆に一緒に行くと返事を返し、帰ってから直ぐに前に気になっていた大学をネットで調べ、その大学に行く決意を固めたのだった。 「その大学にはデザイン学科があるんだっけ?」 「そう。その大学はね、海外で活躍してるデザイナーやファッション業界の人達の講義が充実してるんだって。僕の尊敬してる小鳥遊先生もそこの卒業生で、定期的に教えに行ってるって言ってた」  その大学に決めた日。イルは小鳥遊に連絡を入れた。そして、その大学の話しをすると、小鳥遊はそこに特別講師として出向いていると話し、イルの事を応援するとも言ってくれた。
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