最終章 幸隆だけは、駄目

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「じゃ、またねイル」 「うん。マナちゃん、今日は一緒に選んでくれてありがとね」 「礼なんて良いよ。僕も楽しかったから。それ、幸隆君喜んでくれると良いね」 「うん」  お互い手を振って別れ、イルは愛永が地下鉄へと向かって行くのを見送った。 「まだ大丈夫そうだな」  愛永と別れたイルは、その後、自身の腕時計をチラッと見て時間を確認した。そして、幸隆が家に来るまでまだ少しだけ時間がある事を確認し、ゆっくりと歩き出す。 「良いのあって良かった……」  そう呟きながら、イルは歩きながら頭の中でいつ〝これ〟を渡そうかと考え始めた。  でも、それは家に着く直前に終わってしまう。 「お帰り……」 「ル、ルイ!?」  何故なら、ルイが家の前でイルの事を待っていたからだ。それに、ルイを見て一番驚いた事があった。 「そ、その髪どうしたの!?」  あれからお互い避け続けていて顔を合わせる事が無く、相手の容姿がどうなっているかなんて分からなかった……だから、ルイの変化に気付かなかった。 「前までは、女って失恋したら髪の毛切るのなんで? って、思ってたけど……自分がそうなってみて初めて、切りたくなる気持ちがようやく分かった」  そう言って、ルイはベリーショートになった頭を少しだけ振って笑い、手に持っていた大きな紙袋を突然イルに渡して来たのだった。 「これ、返さないとと思って」 「これって……」  それは、イルが着ようとしていた白いワンピースだった。 「タグは外したけど、ちゃんと綺麗にしたから」  そうルイが言ったように、ワンピースはちゃんとクリーニングされ、新品のように綺麗になってイルの元に戻って来た。  それを見て、ホッとしたイル。
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