最終章 幸隆だけは、駄目

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 その視線はイルさえも驚くほど怖い表情で、そんな顔を好きな人にされたら嫌でも身を引きたくなるだろうと、イルはこの時初めて思った。 「そんなにイルが良い?」 「イルだから良い」  躊躇いも隙も与えないような即答な返答。その声は力強く、イルの心にグッと刺さる。 「ふーん。なんかあれよね……馬鹿ップルてアンタ達の事言うのね」 「馬鹿って……」  否定したいけれど嫌ではないので言葉が出ないイル。 幸隆も満更でもなさそうだ。 「あ、私今日はもう戻って来ないから」 「え……?」 「私からの誕生日プレゼント。いない方が声我慢せずにできるでしょ?」 「!!!」 「ルイ様……」 「あと、その紙袋。そう、そのワンピース入ってるやつ。その中に小さい袋あるでしょ? それは大樹から幸隆にだって」  そう言われ、イルは紙袋の中からその大樹からと言う小さな袋を手に取り、幸隆に渡した。 「俺に?」  それを受け取った幸隆は、ガサガサッと開けて中身を覗いた。すると、急に幸隆の身体が静止し、動かなくなった。 「幸隆?」 「これって……」 「アメリカ製のコン◯ームだって。サイズは一番大きいやつにしたとか言ってたよ。なんか、極薄で付けてる感がしないくらいハイテクって……」 「なっ、なんでそんなの大樹が幸隆に!?」 「キスのお詫びだって」 「え?」 「ほら、これ……」  そう言って見せてきたのは、前に大樹がイルにキスをしてきた時の写真だった。
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