第2章 幼馴染と姉と僕

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 どんなに離れていても幸隆の姿だけは見つける事ができるイル。  今も、後ろ姿を一瞬見ただけで分かった。  背番号なんて聞いていない。  帽子を被った姿でも、イルにはどれが幸隆なのか一瞬で判別できるのだった。  そして、それは幸隆も……。 「あ、こっちに気付いた……」  幸隆と一瞬視線が重なったと思った。すると、幸隆はもう一度こっちを見て、イルの姿をジッと目を凝らしながら見詰めて来たのが見てて分かった。  そして、イルが小さく手を振ると、幸隆はグローブを嵌めた手を小さくヒラヒラっと揺らして応えてくれて、その顔は少しだけ赤く、照れているようだった。  そんな幸隆を見て、イルもなんだか恥ずかしくなる。  まるで恋人同士のようだ。 「ルイー! 頑張りなさいよー!」  けれど、離れた場所から母親の声が聞こえてイルはハッと我に返った。そして、慌ててルイを探した。  ルイは外野らしく、遠くの方で手を振る小さな身体が見えた。  あれがルイらしい。 「締まっていこーーー!」  一人の選手がそう声を出した。それに続き、周りも元気な声を出し、場が盛り上がった。
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