最終章 幸隆だけは、駄目

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 でも、答えは出なくて、自分がして欲しい事をイルは幸隆に伝えたのだった。 「じゃぁさ……上書きしてよ……」 「え……?」 「今から……ベッドの上で……」  そう言って、イルは幸隆の首に巻き付き、汗ばむ頬にチュッとキスをした。  誘い方なんか分からない。これで幸隆の機嫌が直るかも分からない。でも、今はその言葉しか思い付かない。 「明日、立てなくなっても知らないぞ……」  けれど、その言葉は効果あったようだ。  幸隆は少しだけ頬を染め、イルにそう言って来た。  そんな幸隆の言葉に、イルはクスクスっと笑ってしまい、笑顔でこう伝える。 「良いよ。そんなの忘れるくらい抱いて欲しいし……」 「!」 「だって、今日は幸隆の誕生日だし……僕もそのつもりだった…し……」  だから、プレゼントはまだ渡さない。だって、先に僕を渡したいから。 「今すぐめちゃくちゃにして……」 「!?」  汗ばむ肌に今すぐ抱き付きたい。そんな衝動に駆られているのは、たぶん自分だけではないだろう。  その証拠に、幸隆の身体が勢い良く動き出し、イルを抱き抱えながら走り出す。  もちろん、向かった先はイルの部屋。 「イル……」 「ゆき…ちか……」  優しくベッドに落とされ、ベッドが軋む。手に持っていた紙袋はベッドの下に落ち、その存在は忘れ去られた。 「好き…幸隆……好き……大好きぃ……」  手際良く脱がされた衣服。適当に脱いだジャージ。露わになった互いの裸体。 「アッ、アアッ---!」  繋がったそこはいつもよりも柔らかく、幸隆の猛った雄をどんどん呑み込んで行く。 「イル…イルッ……」  我武者らに腰を振る幸隆の意識はもうイルだけに注がれ、イルも同じように幸隆の必死な表情だけをただずっと見詰める。 (幸せだな……)  プレゼントを選んでいる時も感じたこの気持ち。  今までとはまた違う幸福感。
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